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駆け出し臨床統計家の備忘録。

ADaM Specを書こう!(2)specの各シートの役割

前回の記事では,ADaM specを書くために必要なDefine.XMLの知識をインプットしました。

今回は,ADaM specの各シートの役割についてご紹介します。

ADaM specで用意するシート

以下の8種類あります。

  • STUDY

  • DOCUMENT

  • DATASET

  • VARIABLE

  • RESULT

  • DICTIONARY

  • CODELIST

これから,各シートの役割についてお話しします。

 

各シートの役割

STUDY

役割:試験名やプロトコル名を紐付ける。

STUDYシートの項目同士を紐づけるためのOID (Object ID)も,ここで定義する。

DOCUMENT

役割:Define.XMLから参照した資料のリンクを作成する。

例:

ADaM spec中に "Refer to SAP."と書いた場合,そこをクリックしてSAPに飛べるようにしておく。

DATASET

役割:Spec中でADaMを紐付ける。

DATASETシートに書いていないADaMは,仕様で使うことができない。

例:

DATASETシートにADSLが万が一書かれていなかった場合,他のADaMでADSLの変数を保持する仕様としていると,Define.XMLで不具合が起こる。

VARIABLE

役割:ADaMの変数を定義する。

VARIABLEシートがADaM specの主役と言える。

VALUE

役割:Parameterごとに変数の定義が異なる場合に,条件ごとに分けて変数の定義を記載する。

つまり,VALUEシートはBDSのみで使用する。

RESULT

(これから追記予定)

DICTIONARY

役割:試験で使用する辞書の名前やversionを記載する。

例:MedDRA,WHO DD

CODELIST

役割:VARIABLEシートでCodelistを割り当てた変数の,Codelistを記載する。

例:AVISIT⇄AVISITN,PARAM⇄PARAMCD⇄PARAMNの対応を表すCodelist

 

まとめ

  • ADaM specの各シートは,どれもDefine.XMLを作成するために存在する。
  • シートごとに,それぞれ異なる目的・役割がある。

ADaM Specを書こう!(1)Define.XMLとは

CDISC案件なら避けて通れないADaM Spec。そのADaM Specを作成するために必要な,Define.XMLの知識をまとめます。

 

ADaM Specとは?

ADaMデータセットの仕様書(specification)のこと。

ADaMの種類や,ADaMに持たせる変数(例:USUBJID, AVISIT, PARAM等)の導出方法,文字変数と数値変数の関係を表すCODELIST等を記載します。

 

ADaM SpecはExcel形式で作成することが多いですが,CDISC電子申請時にはDefine.XMLに変換して提出します。

そのため,ADaM Specの書き方を身に付けるには,Define.XMLの知識が不可欠です。

そこで,今日はADaM Specを作成するために最低限必要なDefine.XMLの知識をまとめます。

 

Define.XMLとは?

CDISC電子申請の際に,SDTMやSEND,ADaMデータセットの仕様を当局に提出するために作成する,XML形式*1のファイルです。

 

なお,CDISC Define-XMLチームの『Define-XML仕様書バージョン 2.0』には次のように書かれています。

Define-XML の目的は、コンピューターが解読できるフォーマットで臨床研究アプリケーションによるデータセットメタデータ交換をサポートすることである。Define-XML の重要な用途は、CDISC の SDTM、SEND、または ADaM フォーマットで臨床試験データの規制当局への申請をサポートすることである。 

出典:https://wiki.cdisc.org/download/attachments/40861729/Define-XML_2.0_Spec.pdf?version=1&modificationDate=1484639193342&api=v2

 

Define.XMLの特徴

一言で言うと,「むちゃくちゃリンクを飛ばす」ことです。

例:

  1. ADaM変数にフォーマットを割り当てる → Define.XMLでフォーマット名をクリックすると,CODELISTの該当部分に飛ぶ
  2. ADaM変数のDerivation欄でSAPを参照している→ Define.XMLで「SAP」をクリックすると,SAPに飛ぶ

そのため,Define.XMLで正しくリンクが飛ばせるよう,ADaM Specの時点で書き方に注意が必要です*2

 

Define.XMLの作り方

富士通のCDISC関連ツールを使う方法を紹介します。

私自身これしか経験がないのですが,他のツールを使ってるよ!という方がいらっしゃったら,ぜひコメントお願いします。

 

Define.XMLの作成に必要なもの

富士通が展開しているCDISC関連ツール
  • dxgenerator … ExcelファイルをXML形式に変換するツール。「ジェネレータ」と呼ぶ。
  • tsClinical Metadata … ADaM Specを作成するツール。なくても良い。
CDISCが配布しているもの

 

Define.XML作成手順

  1. ADaM SpecをExcelで作成する。ExcelのSpecテンプレートに直接記入する方法と,tsClinical Metadataで作成する方法がある。tsClinicalで作成する場合も,最後はExcel出力する。
  2. ジェネレーターで,Excel形式のADaM SpecをDefine.XMLに変換する*3
  3. スタイルシートが置いてあるフォルダに,Define.XMLを保存。
  4. Define.XMLをダブルクリックして,Webブラウザーで綺麗に表示されるか確認。
  5. 最後に,Pinnacle 21でDefine単体のバリデーション,またDefineとADaMのバリデーションを取る*4

 

Define.XMLを開いてみる

追記予定

 まとめ

  • ADaM Specは,ADaMデータセットの仕様書。
  • 電子申請の際には,ADaM SpecをDefine.XMLに変換して提出する。そのため,Define.XMLに変換することを想定して,ADaM Specを書く必要がある。
  • Define.XMLの特徴は「めちゃくちゃリンクを飛ばす」こと。
  • Define.XMLで正しくリンクが飛ばせるよう,ADaM Specの時点で書き方に注意が必要。

*1:XMLとはマークアップ言語の一種であり,データの記述に使用されます。XMLの親戚には,Webページの作成に使用するHTMLがあります。書き方もHTMLに似ているので,HTML言語に触れたことのある方は,イメージがしやすいかもしれません。ただ,XMLはタグが自由に設定できるなど,HTMLよりも拡張性が高いのが特徴です。

*2:具体的な注意点は別記事にまとめます。

*3:Pinnacle21で作成する方法もあるようですが,経験なし。

*4:バリデーションの話も別記事にまとめる予定ですが,現段階では気にしなくてOK。